2023.7.13
衣・食・住を積載し、行先は自分が決める─。そんな自由な旅ができる自転車キャンプツーリングが、近年注目を集めています。自転車キャンプというと、荷物満載の旅スタイルを思い浮かべる方も少なくないと思いますが、キャンプギア(道具)は一昔前と比べて軽量小型化しており、ポイントを押さえて道具を揃えれば“いつものライドの延長”の感覚で気軽に始めることができます。そこで今回は、トラベルライターの山下晃和さんに1泊2日のキャンプツーリングにどのようなギアを持っていくかを聞いてみました。
山下さん:私の場合は、目的地や走る内容によってキャンプギアを変えていますが、どういったセレクトをしているか参考にしていただければと思います。
人間が最低限必要な「衣・食・住」を持ち運ぶ自転車キャンプの場合は、「衣」と「住」がネックとなる部分だと思います。
まずは「衣」です。
夏の場合は、荷物になる防寒着も要らないので初心者がデビューするには良い季節です。自転車での走行中はサイクルジャージでも良いのですが、キャンプする際は、焚き火の火の粉に弱かったり、身体にフィットする分あっという間に体熱が奪われたりするので、化学繊維ではなく天然繊維の着替えを持った方が賢明です。
また、レインウェアは降水確率0%であれば要らないのですが、近年ゲリラ豪雨も多いので、携行しておいた方が無難でしょう。それに下着、靴下などを2日分用意します。シャワーや温泉を利用するなら、タオルではなく手ぬぐいにした方が何かと便利です。
「食」、は後まわしにして、次は「住」です。
前回の記事で書いたとおり、キャンプ泊はテント、寝袋、マットがあれば成立します。私はこれらを「三種の神器」ならぬ「三種の寝具」と言っています。これに輪行バッグを足します。自転車のメカトラブルや、怪我などをして走れなくなったなど、いざというときにエスケープできる“保険”にもなり、夏の暑い日は寝袋の代わりに身体にかければブランケットにもなります。ツーリング時に持っておいて損はありません。
これら三種の寝具をいかに軽量化してバッグ類に入れるかに集中すればキャンプツーリングは意外と簡単です。
テントは、ファミリーキャンプで使うような大型のテントではなく、山岳テントを選びましょう。山岳テントとは、何日もかけて登山をする「縦走登山」で使われるテントのことです。価格や立てやすさ、重量、アフターサポート、機能性(難燃加工等)を基準に選ぶと良いでしょう。
三種の寝具以外に必要なものはライト類です。ヘッドランプがあれば夜間の活動で両手が使えて便利ですし、LEDランタンなどがあればテントの中で過ごす間に読書を楽しんだり、地図を眺めたり、ギア類を掃除したりできます。
自転車ツーリングの場合は車体に搭載しているヘッドライトでも代用できます。荷物を少しでも軽くしたい際は、ヘッドライトとハンドライトを兼用すると良いでしょう。
もう1つ欠かせないものはスマホが充電できるモバイルチャージャーです。最近は支払いもスマホで、電車、飛行機のチケット代わりにもなるので電源が切れたら一大事です。キャンプ場では電源付きテントサイトもありますが、料金が上がってしまうため、自身でモバイルチャージャーを持ち運んだ方がいいでしょう。近年はLEDランタン付きモバイルバッテリーもあるので、1つ2役なところが自転車キャンプに向いています。
最後に「食」です。日本国内であれば、街と街との距離がそれほど離れておらず、コンビニもあります。昔はコンビニなどが少なく、遠くの商店で買い出しをして重い食材を運んでいましたが、今はキャンプ場の売店で1合分の米を販売しているところなどもあります。便利な世の中になりました。
かつて、タイを1カ月ほど放浪していた時は、50kmくらい走ればガソリンスタンド併設のコンビニがあり、飲み物や食べ物が買えたので、日本と同じように食材を積まないスタイルでも走れました。
テントサイトでキャンプ料理を作りたいという人にはシングルバーナーがオススメです。こちらも縦走登山用に作られているため軽量でコンパクト。それと同時にチタン製、もしくはアルミ製のアウトドア用クッカーなどがあると良いでしょう。バーナーの燃料となるガス缶も収納できる設計になっています。これらを隙間なく収納することを「スタッキング」と言います。そしてカトラリーがあれば「食」の道具は完成です。
その他に、焚き火OKなキャンプ場や河原に行く場合はコンパクトなソロ用焚き火台、焚き火で料理が美味しくなるミニスキレット(鉄のフライパン)。それと共に必要になるものが、薪を割るためのナタ、革のグローブ、トング。他に、焼き物が好きな人にはホットサンドメーカー。さらにお酒を飲みながら星を観たい人なら双眼鏡…。といった感じで、ここは本当にその人次第。キャンプ先でやりたいことが増えると荷物が重くなりますが、その分、楽しみが倍増するでしょう。
例えば、沖縄の美しい海を目の前に、波音をBGMに採れたて野菜を焼き、島豆腐をつまみながら愛車を眺める時間―。
最高だと思いませんか?
タイクーンモデルエージェンシー所属のモデル。自転車、バイク、クルマ、登山で旅をして記事を書くトラベルライターとしても活動。主にサイクルマップ、自治体の冊子、WEB、雑誌などに寄稿。海外30カ国以上を自転車で旅した経験を活かし、自転車とキャンプをテーマにした旅フェス「BIKE&CAMP」の実行委員長となる。自転車キャンプツーリズム協会(BACA)理事。JACC(日本アドベンチャーサイクリストクラブ)評議員。
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