TOP HOW TO ロードバイク乗りがMTBライフを始めてみました楽しく遊んでスキルアップ! 「マウンテンバイクパーク」は上達の近道
ロードバイク乗りがMTBライフを始めてみました<5>

How to ride and enjoy ロードバイク乗りがMTBライフを始めてみました

楽しく遊んでスキルアップ! 「マウンテンバイクパーク」は上達の近道
ロードバイク乗りがMTBライフを始めてみました<5>

 マウンテンバイク(MTB)を手に入れたら、その次はフィールドへ。都心からアクセスも良く、マウンテンバイカーの間でも「楽しみながらスキルが上達する」と評判のパーク「ふじてんMTBパーク」(山梨県)へ行ってきました。山道ならではの地形の走り方を、レベルに応じて体験できるコースが盛りだくさん。悪路を突き進む無敵感とスリル、難所をクリアする楽しさなど、ロードバイクとはまた違う自転車の楽しさとスキルを体得してきました。

MTBパークが“おススメ”な理由

 MTBを始めるにあたって、まず大切なのは安全に走れるスキルを身に着けること。どんなスポーツにも言えることですが、機材スポーツであればその道具をいかに操作できるかが楽しむ上でのポイント。まずは基本の操作を体得することから始めましょう。

 とはいえ、MTBは「最初はどこを走ったら良いかわからない」という声も。勝手に山道を走るのは不安だし、そもそも走って良い道なのかもわからない…。そんな悩みも一気に解消し、基本的なスキルを手っ取り早く身に着けるのに最適といわれているのがMTBパークです。トレイルがしっかり管理され、コースがレベルに応じて設定されているので、ビギナーの人でも段階的にスキルアップを図ることができます。

 現在、全国的に拡大しているMTBパークですが、その中でも高い人気を集めるパークの一つが富士山の麓にある「ふじてんMTBパーク」です。冬場は「ふじてんスノーリゾート」というスキー場として知られていますが、グリーンシーズンはMTB等のアクティビティが楽しめるフィールドとして営業しています。

 東京・横浜・静岡から車で約90分というアクセスの良さはもちろん、人気の理由はその特徴あるコース設計にあります。MTBの本場であるカナダの「ウィスラーMTBパーク」をイメージしたコースで、設計を手掛けたコースプロデューサーの高橋大喜さんによると「日本のライダーに合わせて、楽しく本場の感覚を味わえるようなコース作りを目指しています」とのこと。そのコンセプトに基づいて設計されたコースはMTBプロライダーからも高い評価を得ています。

プロも一押し! ここがポイント

「ふじてんMTBパークは玄人でも楽しめるフローなコースから、初心者でも安心して走れる芝生のコースまで、バリエーションが豊富ですね。しかも1本あたりの距離がそれほど長くなく、最長でも1kmほどなので何度も繰り返すことができ、その都度課題をブラッシュアップしながら走ることができます。距離が長いとビギナーの方は走るだけで疲れてしまいがちなので、休憩をとりながら内容の濃いコースを反復できることは重要なポイントです。

 また、ふじてんは「スキルアップコース」も充実しているので、基本となる体重の加え方(加重)・抜き方(抜重)を体得できるのも良いですね。溶岩地帯ならではの砂利を含んだ土質はマウンテンバイクで走るのに適しており、グリップする反面わざと滑らせたりすることもしやすいので、コーナーを曲がるときのラインどりの練習にも適しています」

MTBプロライダー・清水一輝(しみず・かずき)

 ダウンヒルで歴代トップとなる5度の全日本選手権制覇や2度のアジアチャンピオン獲得。2023年には初開催の全日本選手権マウンテンバイク・エンデューロを制する。レース活動以外でもMTB文化を国内に広めるために様々なMTBスクールやイベントを開催し、コース造成などにも尽力している。

 パークでは有料レンタルのサービスを行っているケースが多く、ふじてんではグレード別の機材をはじめ、ヘルメットやプロテクター等のレンタル品も充実しています。機材は購入したけれどプロテクターをまだ持っていないという方はもちろん、機材を購入する前に一度体験してみたいという方も、端的にいえば、運動靴さえ履いていればその他は全てパーク内で揃えることができます。

グレード別の機材から、ヘルメットやプロテクター等の安全装備もレンタル可能

遊びながらスキルアップ

 いよいよ、トレイルを走ります。スキー場がベースになっているパークは、基本的には下りを楽しむダウンヒルのコースです。リフトに乗って頂上までアクセスし、そこからルートを選択します。

まずはクワッドリフトで頂上を目指します

 リフトにMTBを積載??と、冬場のスキー場を知っている方ほど載せ方に疑問に感じるかもしれませんが、心配ご無用です。係員の方の指示に従ってバイクを預けたら、あとは通常通り着席するだけ。あとは安全バーを下げると現れる背面ラックにMTBが積載される仕組みになっています。

リフトの背面に1台ずつMTBを載せて運搬
頂上で係員の方にMTBをおろしてもらい、受け取ったらGO!

 コースは全部で8コース。スキー場のマップのように難易度別に緑(初級)・青(中級)・黒(上級)と3つに色分けされており、さらに上級レベルになると「超上級」、「プロライン」といったカテゴリーも加わります。

ふじてんMTBパークの全体マップ

 芝生のゲレンデを駆け降りる走りやすい初心者向けコースから、溶岩地帯コースやビッグジャンプが連続するコースなど上級者が満足できる本格コースまで、段階的にスキルアップできる充実のラインナップ。

 面白そうな森の中のトレイルに心惹かれますが、ビギナーはまずはスキーゲレンデを自由に走れる芝生のコースがおすすめ。視界が広く確保できる上に比較的安全な芝生なので、バイクの操作確認やコーナーリングの練習などを行うのにも最適です。

難易度に加えて、各コースそれぞれに特徴がある
自転車のパーツを使ったルーレット。コース選びに迷ったら回す?(※ビギナーは無理せず初級コースから行きましょう)

 バイクの操作に慣れてきたら、次のステップへ。初級者、中級者向けのトレイルに挑戦です。スムースな路面にバーム(コーナリングしやすく傾斜をつけた部分)とローラー(起伏)が絶妙に配置された、滑らかな斜面のコース。ふじてんでは一番難易度が低いコースでも易しめで気持ちの良い路面のうねりが随所にあり、MTBならではの走りの楽しさを体感することができます。

初級者から中上級者まで楽しめる「ダークボルケーノ」コース。コーナリングや木の根、岩のあるセクションがほどよく出現するので、ゆっくり走りながら重心の取り方やブレーキの使い方、タイミングなどを体得できます
富士山麓特有の溶岩地帯は滑りにくく、初心者でも安心してコーナリングの練習ができる

予行練習ができる「スキルパーク」

 ふじてんで、ビギナー向けの練習場として人気なのが「スキルパーク」。テーブルトップ、ドロップオフ、パンプトラックが安全に楽しめる、スキルアップに最適な練習エリアです。「スキルパーク内の各セクションを安全に乗りこなせれば、全てのコースを楽しく走れるように設計してある」とのことで、トレイルに行く前の予行練習として、ここでじっくり基本的な動きを体得するのもおすすめです。

起伏のある凹凸のコブが連続する「パンプトラック」。ペダルを漕がず、起伏での上下時に身体の重心調整で推進力を生む練習
コース上の段差、または段差を降りる「ドロップオフ」。3つの高さがあり、自身のレベルに応じて練習できる

 この他にも初級~中級者向けとしては、緩い斜度でコーナーが連続するコースや、ボブスレーのような巨大バームが出現するコース、連続バームやテーブルトップ、ドロップオフなどバリエーションが豊富な“ふじてん名物”と呼ばれるコースなど、多彩なコースが盛りだくさん。所々難関が待ち受けますが、しっかりと基本を練習してスキルを磨けば走れるコースも増え、その分楽しさも倍増していくことでしょう。

 遊びながらスキルが磨かれ、走れるフィールドが広がっていくのはしっかり管理、設計されたMTBパークならではのメリットです。パークによってはスクールを開催しているケースもありますので、MTBに興味を持たれた方は、まずは近くのMTBパークを探してみることをおすすめします。

文: 後藤恭子(ごとう・きょうこ)

アウトドアメーカーの広報担当を経て、2015年に産経デジタルに入社。5年間にわたって自転車専門webメディア『Cyclist』編集部の記者として活動。主に自転車旅やスポーツ・アクティビティとして自転車の魅力を発信する取材・企画提案に従事。私生活でもロードバイクを趣味とし、社会における自転車活用の推進拡大をライフワークとしている。

この人の記事一覧へ