TOPインタビュー団長安田 インタビュー

Interview インタビュー

安全&快適にロードバイクを楽しむ、心の持ち方

1.ロードバイクとの出会い、自転車好きになったきっかけを教えてください。

 初めてロードバイクを手にしたのは2006年のこと。テレビ番組の景品で、(安田大サーカスの)クロちゃんがロードバイクを当てたんです。  通勤用に速く走れる自転車が欲しいからと譲り受けたものの、乗り方が分からない。「ママチャリに変えてもらおう」と自転車屋さんに行き、手放すつもりでした。しかし、「いいバイクなので乗ってください」と店員さんに諭され、教わるままに乗り始めたことから、僕の自転車ライフは始まります。
 乗り始めた頃は、少しの力で軽々進むのが面白くて、通勤中に寄り道したり、坂を見つけては駆け上がってみたりと、街乗りを楽しんでいました。その後、自転車雑誌から声をかけていただき、『通勤坂』という月1回の連載を担当したことが、本格的なローディーへのきっかけになりました。

 『通勤坂』というタイトルから連想する通り、当初は「通勤中に発見した、短い坂を紹介する」内容として始まった企画でした。しかし、都心の坂を紹介したのは、初回のみ。アグレッシブな担当編集者の「もっと長い坂にチャレンジしましょう」という提案により、突然、郊外の山道をのぼることになったんです。「この道、通勤には使わないでしょう」という反論もむなしく、約14㎞を一人黙々とのぼったのが、僕にとって初めての、本格的なヒルクライム体験でした。テレビの撮影なら、道中もカメラさんやスタッフさんと一緒にのぼるのでしょうが、撮影されたのはスタート時点とゴール地点のほか、途中地点の1回のみ。仕事なのに誰もいなくて「これは何かのドッキリ企画で、騙されているんだ」と思っていました。

 あまりのつらさに「もう二度とのぼりたくない」と思ったのですが、担当者は次々に坂を見つけてきては連載企画にのせ、挙句の果てにヒルクライムレースに勝手にエントリーまでしてしまいました。やるしかないのなら、ちゃんと練習して、できるだけラクにのぼりたい。そんな思いで3本ローラー台を購入。自宅でセッティングし、何度かバランスを崩し“室内落車”も経験しました。それでもめげずに練習するようになったあたりから、スポーツとしての自転車の面白さに目覚めていきました。

2.団長さんにとって、自転車の面白さはどこにありますか?

 自転車の最大の魅力は「走り終わったあとのご飯が500倍おいしくなる」ところ。ハイスピードで道を駆け抜ける爽快感や、ヒルクライムを終えた後の達成感など、好きな要素はほかにもあります。でも、冷やしてもいない常温の水でさえ、「こんなにおいしい飲み物があるなんて!」と感激できるのは、自転車以外にないんじゃないかな。
 以前、芸人の後輩を誘って100㎞レースに出たことがありました。彼は、あんこが大嫌いだったのですが、レース終盤に、手元にある補給食がどら焼きしかなくなってしまったんです。「ハンガーノックになるから、食べろ」と必死に説得し、無理やり食べさせたところ、それまで頑として拒んでいたくせに、「うまい!」と、その美味しさに雄叫びをあげました。「こんなおいしいもの、初めて食べました」なんて言って。自転車は、体への直接的な負担が少ないスポーツだからこそ、長時間走り続けることができて、エネルギー消費も大きい。自転車でしか味わえないお腹のすき方と食事の楽しみは、一度味わうとやめられなくなります。

3.2012年9月に「芸人として初の実業団選手」として、宇都宮ブリッツェンの下部組織、ブラウ・ブリッツェンの入団試験に合格。また、トライアスロン大会にも参戦され、アスリートとして存在感を示しています。トライアスロンを始めたきっかけは何でしたか。

 もともとサッカーをやっていたのでランニングには不安がなく、学生時代から潜水の練習を積みライフセーバーの資格もあるので、ラフウォータースイムに恐怖はありません。2~3分間、潜っていられるから、トライアスロンスタート時に(他の参加者との)ポジション取りでぶつかって浮き上がれなかったとしても大丈夫だろう。そんな理由から、自然と「挑戦してみよう」と思うようになりました。
 トライアスロンは、3種目あるので練習も飽きません。ロードレース用のバイクとトライアスロン用とではまるで違う乗り物ですし、トライアスロンを始めたことで、自転車の奥深さをより知ることになりました。

4.2015年7月にはトライアスロン大会で大きな落車を経験されています。

 落車した瞬間のことは、全く覚えていないんです。時速40㎞ほどのスピードのまま給水所でボトルをもらおうとしたのが間違いでした。周りにも多くの選手がいた中で、バランスを崩し、「スピードを落とさなくちゃ危険だ」と思った次の瞬間には落車。気づいたら、病院のベッドの上にいました。右目の上あたり、前頭部を強打したほか、地面に叩きつけられたときのものなのか、靴下もグローブの手の甲の部分もすべてビリビリに破けていました。

5.ヘルメットがなければ、命にかかわる事態です。落車を通じて、何か変わったことはありますか。

 よく、あれほど大きな落車をして怖くないですか、と聞かれますが、自転車好きな人って何度落車しても乗り続けていて、懲りないヤツばかりです(笑)。  落車をしてから変わったのは、乗る前に心を整えるようになったこと。公道で練習するときは“Share the Road(道を共有する)”精神を大切にします。信号で無理をしない、車と張り合わない、交通ルールを守らない方に遭遇してもカッカせず、落ち着いて注意するなど、心に余裕を持つようになりました。「自転車は車と同じですから、左側通行ですよ~」といった風にね。
 多摩川沿いもよく走りますが、川沿いの散歩コースには、予測不可能な動きをする人ばかりです(笑)。小さい子ども、伸びるリードをつけた散歩中の犬、突然立ち止まって振り向くおじいさんなど。誰がどんな動きをしようが、こちらがしっかりスピードダウンをして「どうぞ先に行ってください」「危ないですよ~」と余裕を持つことが、安全なライドにつながると実感しています。

左:落車時に着用していたヘルメット。破損の激しさから、衝撃がうかがえる。

6.安全なライドには、自転車のメンテナンスも重要だと思います。メンテナンスの点で、意識されていることはありますか。

 家の近くに信頼できる自転車屋さんを見つけてからは、メンテナンスは店長に全面的に頼っています。自宅から通いやすいことが大事だと思い、近所の自転車屋さんをいくつか回って見つけました。何か気になるところがあれば、頻繁に見てもらい、僕の生活には欠かせない存在に。一度、店長が体調を崩して入院されたときには、「元気に戻ってきてくれないと困るんです!」とお見舞いにまで行きました。
 自転車の楽しみは、お気に入りの自転車選びから始まると思います。気の合う自転車屋さんを見つける際は、信頼できる友人の紹介なども手ですし、SBAA PLUS認定者のいるお店を探すのもいいでしょう。専門家のパートナーがいる安心感は、快適な自転車ライフには欠かせないと思います。

7.これまで数々の道を走ってきた団長さん。オススメのコースを教えてください。

 国内ですと、千葉県の房総方面か、神奈川県~山梨県の道志みちを練習コースとして走ります。イベントでは、三浦半島(神奈川県)内8カ所の景勝地に設置されたマイルストーン(記念撮影用モニュメント)を巡るサイクル・スタンプラリーが楽しかったですね。三浦半島内8カ所の景勝地に設置されたマイルストーン(記念撮影用モニュメント)を巡り、スマホを利用してスタンプを集めていきます。適度な距離にエイドステーションが設置され、空気入れとパンク修理も無料でできるという充実ぶり。初心者には最高のコースだと思います。
 景色が素晴らしかったのは、青森県八戸市の種差(たねさし)海岸。仕事で行ったのですが、海の景色もさることながら、芝生が気持ちよすぎて、寝そべったまま熟睡した思い出があります。

 仕事で韓国を訪れた際は、ソウルからプサンまで、2車線・630㎞続くサイクリングロードを(一区間)走り、「自転車に優しい国だな」と感激したのを覚えています。
 自転車は、自走するからこそ景色を楽しめて、行動範囲が本当に広い。僕はGPSを付けずに、初めて訪れた町をぷらっと走りにいって迷子になるのが好き(笑)。まだまだ走りたい場所がたくさんあって、楽しみは尽きませんね。

8.トライアスリートとして、2017年にはオランダで開催される「世界トライアスロン選手権」(40 - 44歳カテゴリー)に挑戦するそうですね。もはや「自転車芸人」の枠を超えた挑戦。意気込みをお願いします。

 世界選手権への挑戦を宣言したからには、中途半端な練習はしていられません。今は、週6日、毎日2種目のトレーニングを欠かさず行っています。朝6時半からプールで4㎞泳ぎ、仕事に行ってから、夕方ラン10㎞やバイク90分を組み合わせるなどが僕の日常。トレーニングがない日に仕事に行くと「あー、久しぶりのオフだなぁ」とつい呟いてしまい、クロちゃんやHIRO、周りのスタッフから「何の職業の人か分からない」と突っ込まれます。
 アスリートの方に、1週間のトレーニングスケジュールを話すと、「そんなに練習している選手はいない」と言われますが、僕は、キャリアの長いアスリートの足元にも及びません。練習量が負けていては、勝負にすらならない。やると決めたことはやらないとね。  トレーニング後のご飯を楽しみに、コツコツ頑張っていきます。

【団長安田さんよりコメント】
自転車の最大の魅力は「走り終わったあとのご飯が500倍おいしくなる」ところです。これから自転車を始めてみたいという方には、是非あの感激を知ってもらいたいです。でも公道を走るときは“Share the Road(道を共有する)”精神で交通ルールをきちんと守ることが大事です。それではお気に入りの自転車と、気の合う自転車屋さんを見つけて快適な自転車ライフを満喫してください。僕もトレーニング後のご飯を楽しみに、コツコツ頑張っていきます。